TIRIクロスミーティング2021

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後藤 康浩 氏 インタビューKeynote Speaker Interview02

9/24〜10/1配信 基調講演「中小製造業の未来 〜小売業との新たな連携に活路」

事前インタビュー

後藤康浩氏

亜細亜大学 都市創造学部 教授

後藤 康浩(ごとう やすひろ)

コロナ禍の巣ごもり需要を受けて、にわかに活況を呈す小売業。そこに中小製造業はどう関わっていくのか、アジア経済を中心に産業論に造詣が深い後藤 氏に「TIRIクロスミーティング2021」基調講演で伝えたい中小企業へのメッセージをお伺いしました。

コロナ禍において、日本の中小製造業はどのような状況に立たされているのでしょうか?
また、今後どのような方向転換や取り組みが必要となるのでしょうか?

2020年にコロナが始まった段階では、需要が大きく減り、生産が激減することでお客様からの注文減少が中小製造業を襲いました。しかし、幸いなことに2020年末から世界的に経済が回復し、2021年に入ってからは好調な受注状況です。ただ、先行きについてはコロナがいつまで続くかわからず、政府の投資によって景気を回復させてきましたが、その流れもどこまで続くかが懸念されます。また、同時に世界的なカネ余りによって資金が資源市場に流れ込み、資源やエネルギーの価格が高騰、原料費を押し上げています。製品の値上げが難しいなか、コストを吸収できるかにも大きな懸念があります。とは言いつつも、変化はチャンスを生むことにもつながります。生産拠点の移転、新しい商品・サービスの開発で、新しいチャンスを掴めるといったところに目を向ける必要があるでしょう。

インタビュー風景

そのような中でも今後伸びる中小製造業とはどのような企業でしょうか?

インタビュー風景

中小製造業にとって今、チャンスは小売業から訪れようとしています。小売業が商品を自主開発する大きな潮流が生まれているからです。それを受注できるのは、実は大手ではなく、中小の製造業なのです。新商品開発における試作のスピードや設計変更への柔軟な対応力、小ロット生産など中小製造業の強みが活かせるからです。
もともと中小製造業は大企業に比べて組織や現場がはるかに柔軟です。加えて経営者自身の決断の速さも強みです。中小製造業は小売業のニーズを汲み取ることで大きなチャンスを掴むことができるでしょう。

小売業へのアピールのポイントはどこになるのでしょうか?

やはり自分たちの最も強い分野、技術を具体的に示し、商品化するという広い意味でのプレゼンテーションが重要です。これまでのように大手企業に部品や加工を提供しているだけでは、あまり自分を売り込むという機会も意識もなかったかもしれませんが、今後は自分たちのオリジナルの技術、商品を世間に訴求していくことが重要になります。
今はインターネットでの情報発信やeコマースを通じての販売など多くの方に知ってもらうチャンスも増えていますし、行政の協力で地産地消型で地元で自社製品を売ることも広がっています。チャンスをうまく利用して、自分たちにはこんな技術がある企業であるを示すという意識が重要です。

「売ること」をより意識して、生産過程に取り入れることでどのようなことが変わってくるのでしょうか?

インタビュー風景

これまでのメーカーは自分たちの技術をどう使うかということだけに考えが集中し、消費者のニーズと自分たちの技術を結び付けることを意識していなかったかと思いますが、今後は消費者と自分たちを結びつける必要があります。自分たちの商品を市場に送るだけの「プッシュ型」商品ではなく、消費者のニーズを知り、それに応えていく、市場に引っ張っられて商品が開発される「プル型」に転換することが重要です。
消費者の目線を意識することで、日々の研究開発やものづくりで、消費者が本当に必要としていることを見つけることです。自分たちの技術を優先するのではなく、消費者の声を優先すると、ものづくり全体が変わるのではないかと思います

インタビュー風景

企業自身や消費者のSDGsへの意識は、中小企業の今後にも大きく関わってくるのでしょうか?

一般的にいうとSDGsは大手企業や国際機関が主導しているという印象が強いかと思いますが、SDGsという言葉が生まれる前からそれを実践してきたのが、中小製造業ではないかと思います。中小製造業は地元コミュニティと一体で、協調、共感も強く、その中で地元の原料を使ったものづくりや、捨てるのではなく、いつまでも長く使えるサスティナブルな商品づくりを心がけてきたからです。まさに中小製造業こそSDGsがDNAにあり、その原点に帰ることで中小製造業の強みというのが際立ってくるはずです。

中小企業が今後飛躍していくために、都産技研をどのように利用していけばよいでしょうか?

研究開発と技術開発とでは、技術開発主導になってしまい消費者の声を意識するということが薄れてします。技術研究機関と中小製造業の技術者との連携は、技術シーズを生み出して発展させていくということは非常に重要ですが、そこにどのように消費者の声をとりこんでいくか、二者だけでなく消費者を取り込んだ三者の連携ということも重要です。消費者の声を意識するという点で、大学は消費者側に立った目線を導入してくれる新しい力として意識していただければと思います。
今までの産学連携では技術的な部分にスポットが当たっていましたが、いかにものを売るか、デザイン、コンセプト、ストーリーをつくる、というようなソフトウェア的な部分は大学の大きな強みだと思います。中小製造業・大学・都産技研が上手く連携して三者一体の形になれば、新しいタイプの技術や商品が生まれてくるのではないかと思います。

コロナ渦により厳しい経済状況のなか、後藤氏には中小企業がチャンスを掴むための新しい視点についてお話しいただきました。

後藤 康浩(ごとう やすひろ)
1958年生まれ。早稲田大学政経学部卒業、豪ボンド大学経営大学院修了(MBA取得)。
1984年日本経済新聞社入社、国際部、中東、ロンドン、北京など各地の駐在を経て、論説委員、アジア部長、編集委員などを歴任。テレビ東京系列「未来世紀ジパング」はじめBSジャパン、ラジオ日経などテレビ、ラジオで活躍。現在は亜細亜大学都市創造学部教授を務める。
著書に『強い工場』『勝つ工場』『アジア力~成長する国と発展の軸が変わる』『資源・食糧・エネルギーが変える世界』『ネクスト・アジア ~成長フロンティアは常に動く』がある。